eri

eriの止まぬ探究心と加速するマルチタスク。

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自身のブランド「mother」、「VTOPIA」、「TOWA CERAMICS」のデザイナーとして、そして古着屋「DEPT」のオーナーとして、マルチに活躍するeri。多くの人を惹きつける彼女のファッション感覚を交えながら、怒涛の毎日を送るライフスタイルを覗く。

Photography by Reiko Touyama
Text by Aya Tsuchii
Edit by Ayumi Kinoshita

 平日昼間の丸の内はスーツを着た会社員やOLで賑わうビジネス街。せかせかとランチを済ませる人々の中で、eriは異国の雰囲気を纏い、ゆっくりと話をしながらランチをする。この日はブラックのロングニットにブラウンのワイドなコーデュロイパンツ、そしてローヒールのポインテッドトゥを合わせていた。異国の雰囲気は輪っかのついたリング、そして揺れるシルバーのピアスといった個性的アクセサリーたちからも感じられる。




 仕事柄海外に行くことが多い彼女は、あらかじめ現地の古着屋を調べて足を運ぶようにしている。「古着めぐりに熱狂的というわけではないけれど、店に出向くと結構買います。今年はロシアに行きたいと思っています。こないだメキシコに行ったのですが、想像以上に興味深くおもしろかったので、また次のチケット買っちゃいました」と旅の話を楽しそうに話す。旅好きで、イスラエルやジャマイカなど、辺境の地にもよく足をのばす。そして記録するために旅先々では写真を撮っている。彼女のバックの中から出てきたのは、同じ形状の大小さまざまなカラフルチェックのポーチ。「これ、メキシコで結構売っていたんですけど、たくさん持っていたおばさんが意地悪で。もっと買いたかったんですけど、あのおばさんのところだけでは買わないと心に決めて他を探し回って」と、随所で旅での出来事を話してくれる。

 彼女の両親は1981年にニューヨークで古着屋「DEPT」をスタートさせた。だからeriはニューヨーク生まれなのだ。日本にお店をオープンした頃と重なったことから、両親は帰国を決意したそう。「当時のニューヨークは日本に比べると治安が悪かったり、子育てのことを考えての決意だったと聞いています。生まれて半年くらいで日本に帰ってきたのかな」。原宿の「DEPT TOKYO」といえば、1980年代を席巻していた、いわばレジェンド的な古着屋。父・永井誠治がオーナーを務めており、彼女の周りには古着が当たり前のように溢れていた。そんなちょっぴり特別な環境で自身のスタイルに磨きかけてきた彼女は「ヴィンテージの古いものしか着ていなかった」と幼少期からファッションを楽しんでいた様子。「自然と身につけていたので、ヴィンテージが好きという感覚はありませんでした。小学生の頃からよく父の倉庫で遊んでいたんです。彼が買い付けた古着や小物で溢れていたので、気がつくと“これ可愛い、好き”、“これを着たい”という感覚が芽生えていましたね」。




 2011年、父の引退と同時に惜しまれながら「DEPT TOKYO」は店じまいした。現在原宿と中目黒に佇む「DEPT」は、2015年に彼女が復活させたものだ。再オープンさせた当時のことを尋ねると、「古着屋になりたかったというより、父がやってることが好きだった」と明かす。「父が辞めると決めたとき、もし私が引き継げるような状態だったらそのまま続けることができたでしょうけど。私も自分のブランドで忙しく、父のやっていることやあの規模感をそのまま引き継げる状態ではなかった。なので閉店を泣く泣く見届けました」。生まれてからずっと存在していた父の店がなくなってしまう寂しさと、存続を願う気持ち、請け負う困難な環境で生きていた当時の状況など、彼女が抱えていた葛藤が垣間見える。しかしやがて転機が訪れる。「自分のブランドをやっていく中で、従来のファッションシステムであるコレクション体制が古臭く感じるようになりました」。古着は一点ものだったり、年代を重ねて個性やくせがあったり、また趣を感じたり。そんなモノの中で生活していた彼女にとって、シーズンごとにコレクションを発表していくシステムに疑問をもつ気持ちはわからなくない。「あまり意味を見出せなくなった時期があったので、コレクションの発表はやめてしまいました。それから、“父の店をもう一度”って思ったんです」。プレッシャーを感じたり、期待の大きさに不安を抱いたり、ネガティブな感情はあったのか。「父がやってきたことは100点満点だったと思っています。なので、私は彼をそのままそっくりなぞらえるのは到底無理な話」ときっぱり。その代わり彼女は、彼女だからできることを考えた。「彼が全盛でやっていた時代と私の生きてきた時では時代感が違うし、性別も経歴も違う。その中で私にしかできないことがある。自分らしい店づくりをしていこうと決意しました」。そんな彼女の自信につながったのは、父とのある思い出。「今までの人生の中で、一度だけ父と買い付けに行きました。その時父が、“eriの選んでいるものはパパにはわからない。でもそれが正しい”と言ってくれました。私も同じことを考えていました。父がわかるものや同じようなものを選んでいるのでは面白くないと」。



 彼女の古着愛は服の着こなしにも表れている。「大人の服やキッズの服など、サイズに縛られることなく着ています。古着は縮んでいるものもありますし、昔のサイズは小さいものも多い。それに一点物も多く、サイズが選べない場合も。なので気に入ったものの特徴を生かして、どうやって使うかを考えます」。ほかにも古着にはデメリットがある。まず挙がるのは洋服の状態だろう。匂い、ダメージ、裾や袖の丈感など、古着独特の問題もあり、好きな古着のアイテムに出会っても長く着ることが出来ないことも多々。「私は少しのシミや穴を見つけても、いいなと思ったら買う。でもそれって本当に古着が好きで、古着を理解している人のやること。全ての人がそうではないと思うけど、普段古着を買わない方にも満足してほしいと考えているので、自分たちで直しも行っています」と、色々な客層を考慮し、策を練っている。古着の状態やデメリットを最小限に減らしていく作業をとても大切にしているのだという。「直せるものはリペアする。今の時代にあった長さに裾上げしたり、首元の形なども変えてみたり。“DEPT ONE OF A KIND”という名前でリワークのラインも作っています。私は古着の仲介人なので、古着のデメリットをなるべく感じないような状態にしてあげたい。古着に長く生きてほしいので」

 デザイナー、オーナー、プロデューサー、そしてバンドとその活動は多岐にわたるeri。彼女の毎日は多忙を極める。好きなことを仕事にしている彼女だが、ただ楽しいだけではない。「好きこそものの上手なれって言葉があるように、好きなことを続けるのはすごく大変だったりもする。好きなことって詳しくなってしまうから、もっと上手に、もっとかっこよくやっている人と比べてしまう。自分の劣っている部分や足りてない部分が見えますし、到達するまでの道のりが長く感じられるんです。好きだから適当にできないですしね。決して楽ではないです」と苦悩も明かす。彼女のどの活動を見てもブレがない。好きゆえに調べ尽くし、突き詰め、それが深いこだわりへと変化する。彼女の姿勢を重ねてみると、彼女の強さが見えてくるのだった。

 彼女の食生活も実にストイック。去年1年間は、肉、魚、乳製品を摂取しないほぼヴィーガンスタイルの生活を送っていたそう。「今はペスカタリアンに近い状態ですね。ペスカタリアンは植物性の他に魚介類を食べます」。どうして今の食スタイルに行き着いたのか。「きっかけは頭が冴えるって聞いたから。人間の体って草食動物の体をしているから、動物性を摂取すると消化にエネルギーがかかる。だから、ヴィーガンスタイルにすればその消化にかかるエネルギーが脳にいくことになりますよね。そうすると、脳の回転が良くなったり、思考が冴えるらしいんです。実験の意味で始めました。ただ、信用している店では魚や肉も量を考えて食べたりもします。そうやってルールを決めてやっていましたね」。実際、効果覿面で「始めたらすぐにわかりました!」とにこりと笑った。

 ヴィンテージ、旅、食、音楽、アートと、興味を持ったものをとことん突き詰めていく彼女だが、すべて繋がりがあるのだと説明する。「ファッションは音楽やアートを切り離して語れるものではない。ファッションのこの年代が好きってなったら、自然とその時代のロックスターやデザイナーがその当時ハマっていたアーティストなどが芋づる式に出てくので、自然と詳しくなっていきます。ファッションってとても複合的な要素で成り立っているので、エコノミーや社会背景も関係してくる。こんな時代だったから、こういう構成で、こういう色が多かったんだって。そういうのがまた面白いです」。そして話は今彼女が夢中になっている趣味へ。「チェッカーズがブームで研究しています。“チェッ研”と名付けているのですが、友達と二人でDVDを研究したり、オークションでツアーのパンフレットやファンクラブの冊子を揃えたり、インタビューなどでの発言をエクセルにまとめたり。もちろん踊りをマスターして、チェッカーズだけを歌うカラオケに行ったり。音楽も、パフォーマンスも、衣装もとてもいいんです」。そしてもう1ついまハマっていることといえば、「10代の頃からボタンなどのヴィンテージパーツを集めているのですが、それを素材で分けて収納し直しています。ただ片付けるというのではなく、毎日1つ選んで、素材や色など、それに関してとことん紐解いていく。夜に出歩いて遊んでいるように思われがちですが、結構家で過ごしているんです。やることたくさんあるのでね」。

eri
1983年ニューヨーク生まれ。文化服装学院に通いながらビンテージワンオフブランド「CHICO」を立ち上げ、2004年にはブランド「mother」、2012年にジュエリーブランド「VTOPIA」、2016年にテーブルウェアブランド「TOWA CERAMICS」を誕生させた。2015年に父の古着屋「DEPT」を蘇らせ、現在、原宿と中目黒に店舗を構える。雑誌媒体での露出も多く、「立花ハジメとLow Powers」として音楽活動も。活躍の場をどんどん広げている。